2001年8月23日
PCのサウンドカード事情は近年、大きく変わってきている。一昔前にはサウンドカードは「とりあえず音を出すためのパーツ」であったが、最近はチップセットにサウンド機能が統合され(i810/815シリーズなど)、マザーボードの多くが標準でサウンド機能を有するようになっている。そのため、これから購入しようというサウンドカードは、オーディオデータ(MP3やWMA)やDVDタイトルの再生を“PCでより高音質に楽しみたい”人々向けの嗜好製品へとシフトしつつある。そのため、サウンドカード市場は5000円以下の低価格エントリー製品(オンボードにサウンド機能を持たないPC向け)から、音質を追求したいわゆる“高級オーディオカード”まで、幅広い製品が登場するようになった。
一時インターネットで話題になった
あの新型サウンドチップを搭載
「Acoustic Edge PCS706」は、Philipsが発売し、アスクが国内販売を行う製品で、現在のサウンドカード市場においてミッドレンジクラスに位置する。核をなすサウンドチップはPhilipsブランドの「ThunderBird Avenger」だ。以前、音質にこだわるオンキヨーがこのチップを搭載したサウンドカードをリリースする、とアナウンスしたこともあり(チップ開発の遅れのため、結局世の中に出ることはなかったが)、このサウンドチップが音質重視であることがうかがえる。
QSoundでどんなデータもサラウンド再生
この製品の特徴は“充実したサラウンド機能”だ。サウンドコーデックチップはプライマリの「Sigmatel STAC9721」が2ch、セカンダリの「Sigmatel STAC9708」が4chのアナログ出力を行い、製品単体でDolby Digitalの5.1ch再生が可能となっている。また、コントロールパネルからサテライトスピーカの音量調整も行える。5.1chのDVDタイトルの再生にはサウンドカードに対応したDVD再生ソフトが必要になるが、本製品には5.1ch出力対応の「PowerDVD 2000」が標準添付されている。
これだけならば今時のサウンドカードとして至極当然のスペックだが、本製品はさらに「QSound」によるサラウンド効果も利用可能になっている。QSoundとはQSound Labsが開発した、3Dサウンドをより楽しむための技術である。3Dサウンドはさまざまな規格が乱立している状況だが、QSoundは「I3DL2」「EAX1.0/2.0」「A3D1.0」といったPCゲームに広く使われている3DサウンドAPIとも互換性を持っているのでゲームユーザーにも安心だ。
さて、QSoundの最大の特徴は、“どんな音”でも(ステレオであれば)擬似的に4/5.1ch化して再生できることにある(QSoundの技術詳細は同社Webサイトを参照)。つまり音源がCDでもMP3でも、5.1ch対応なデータであるように聞こえるのだ。あくまでもエミュレートなので、もちろん本当の5.1chソースと比較するとその違いは一目(耳)瞭然であるのだが、非常におもしろい機能であることは間違いない。ステレオスピーカやヘッドフォンでの5.1ch仮想再生も対応し、この機能はあらゆるユーザーが楽しむことができるようになっている。
コネクタ構成は少々変わっており、ブラケット(カードエッジ)部にゲーム/MIDI、マイク入力、ライン入力のほか、“ミニDIN端子が2つ”ある。この端子に付属の専用ケーブルを接続することでアナログ5.1ch出力とS/PDIF入出力を行う仕組みになっている(したがって、この専用ケーブルを紛失するとまったく出力不可能になってしまうので十分に注意しよう)。S/PDIFの出力周波数は48kHz固定で、Dolby Digital/DTSのスルー出力も可能だ。ただし入出力端子ともにコアキシャル(同軸)であり光端子ではない。外部のDolby Digital/DTSデコーダに接続する場合にはコアキシャルでも問題ないが、MDレコーダとの接続には別途同軸⇔光変換ケーブルが必要になる。
音質は申し分なしだがMIDIは苦手
気になる音のクオリティは、一言で言うと「非常に良好」だ。ノイズは極めて少なく、ボリューム設定を最大にしても音割れせず、それでいて音量も十分にある。CPU負荷も小さいようで、Windows 2000でMP3を演奏しつつWebブラウザやペイントツールで同時に作業を行っても特に音飛びは発生しなかった(編集部注:発売直後の2001年3月頃はWindows 2000で5.1ch出力ができないなど、ドライバ等の不具合が取りざたされたが、筆者の環境ではWindows 2000上でまったく問題なく動作している)。
いくつか音楽データを再生してみたところ、音質は低音に厚みがあり高音域はシャープという感じである。といっても海外製サウンドカードにありがちな“低高音域を強調し過ぎて耳が痛くなるもの”とは違い、非常に澄んだ音という印象だ。筆者はあまり音にうるさい人間ではないのだが、それでも以前使用していたサウンドカード(SoundBlaster Live!)との違いがはっきりと聞き取れた。音質重視派にも満足のいく製品としてお勧めできる。
だが、MIDI出力はお世辞に良い音とは言い難い。ハードウェア的には同時発音数96音、音色数576と申し分ないのだが、肝心の再生クオリティはかなり厳しい。この点はメーカーサイドも十分認識しているのか、YAMAHAのソフトウェアMIDI音源「S-YXG50 V3.01」が付属しており、コントロールパネルにもこのソフトの設定項目が組み込まれている。
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各出力チャンネルのスピーカテストが可能なので音量バランスの調整も楽だ。 |
秋葉原のストリートプライスは1万1000円前後となっている。廉価カードと高級カードの狭間という微妙なラインにあるが、「音質はもちろん3DゲームやDVDも楽しみたい」「音質重視だが、高級オーディオカードは値段がちょっと」という方にはベストチョイスだといえるだろう。
(宇野貴教)
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