DIGITAL BUYER

ポラロイド ピンホールフォトキット ぜんぜんデジタルでない夏休みのカメラ工作
ポラロイド ピンホールフォトキット
日本ポラロイド
8980円(カラーフィルムセット)
7980円(セピアフィルムセット)

03-3438-8833/06-6252-1761
http://www.polaroid.co.jp/


2001年7月24日

最新技術が惜しげもなく投入され、気軽に高画質な画像を撮影でき、電池代以外にランニングコストもかからないなど、デジタルカメラは各種の利点を持つすばらしい製品であり、これからもカメラの進化の最先端を走るモノであろう。ここで紹介するのは、撮影に手間がかかって画質も低く、ランニングコストも高い(さらにぜんぜんデジタルではない)「ピンホールカメラ」というローテクなカメラだ。

カメラ・オブスキュラ

紙製のパッケージは手提げカバンのような形状。写真のパッケージはカラーフィルムセットで、セピアフィルムセットは青いパッケージ色となっている。

 日本ポラロイドの「ピンホールフォトキット」は、その名のとおりピンホールカメラを自作するキットだ。小・中学校の理科の授業あたりで作った経験のある方もおられるかもしれないが、まずピンホールカメラについて簡単に説明しよう。

 ピンホールカメラ(針穴写真機)は、レンズの代わりに数mmの小さな孔を通して暗箱内に倒立像を映し出すカメラである。カメラの語源である、「暗い部屋」を意味する「カメラ・オブスキュラ(camera obscura)」自体、ピンホールを通して投影された風景を見る(もしくは模写する)ことを指しており、銀塩カメラが開発される前から知られていた現象だ。



パッケージの内容。奥の左側2つが紙製ボディ(右は小冊子)、中段の黒いものがフィルムマウント。手前の黒い正方形がピンホールとそのフレームだ。

 ピンホールカメラの特徴は、ピント合わせが不要で被写界深度(ピントの合う範囲)が大きく、そして映し出された像の明るさは非常に暗いといったところだ。被写界深度が大きいことから、画面手前から無限遠まですべてが写った写真が撮れるのだが、レンズによる像と違って全般的にピントの甘い像となる。また、像が非常に暗いことからシャッター速度は遅くなり、数秒から数分の露光時間を必要とする。ピンホールの孔径を大きくすれば像は明るくなるが、径が大きくなれば解像感が悪くなるという問題もある。



組み上げると箱状になる。各部材の接合部は両面テープで貼り付けたのち、外側から黒いビニールテープで巻くなどして遮光には気を付ける。

 ピンホールフォトキットは、ポラロイドのインスタントフィルムを使用することでピンホール撮影をより容易に行えるようにしたものだ。キットには「タイプ669」(カラー)インスタントフィルム20枚(10枚1パック)もしくは「タイプ606」(セピア)が付属しているが、フィルムパックを買い足せば何度でも利用できる。フィルムシステムはポラロイドのスタンダードサイズフィルムと呼ばれるタイプのもので、「ポラカラー679」(カラー)「タイプ665」(白黒)「ポラパンプロ100」(白黒)などが利用できる。なお、フィルムの価格はタイプ669やポラカラー679が5306円(20枚入りパック)だが、店頭実売価格を踏まえたランニングコストとしては1枚あたり100〜150円程度と考えればよいだろう。



組み上がった本体の後ろを開けたところ。ここにフィルムパックをセットする。

 キット自体はペーパークラフトというよりもただの「箱」であり、フロント中央部に金属製のピンホールプレート、下部に三脚用の金属マウント、リアにインスタントフィルムのマウントを貼り付けるようになっている(組み立てはすべて両面テープと粘着テープで行う)。ピンホールは0.3mm(F266相当)と0.4mm(F200相当)の2種類が付属している。孔の口径が小さいほうが解像感は高くなるが、露出時間がかかるので、用途や天候に応じて選択するとよいだろう。



フィルムを入れてフタを閉めると撮影準備は完了だ。撮影後は右端からはみ出している白いタブを引いてフィルムを引き出す。フタにはフィルムと天候別に露光時間の目安が印刷された付属のシートを貼り付ける。

 仕上げはピンホール部を黒い粘着テープで塞いで(これがシャッターとなる)、フィルムマウントにインスタントフィルムをセットすれば撮影準備は完了だ。




付属の“ファインダ”を両面テープで貼り付けたところ。フォトキット後部から見てファインダの間にある風景がだいたいの画角となる。


じっくりと風景を焼き付ける

撮影サンプル1。使用フィルムはポラカラー679。露光時間は約5秒。撮影サンプルはいずれもフラットベッドスキャナで取り込んだもの。

 撮影にあたっては三脚孔固定金具に三脚をしっかりとセットして構図を決める。ファインダとしては、紙製の栞のようなパーツが付いていて、カメラ側面の前上端に貼り付けて使うようになっているが、カメラ後部からだいたいの見当を付けるのと大して変わりない。構図を決めたらそっとピンホールをふさぐテープを剥がす。露光時間の目安はカメラ後部に表が印刷されており(組み立て時に貼り付けるのだが)、晴天下においては10〜15秒、曇天ならば数分間程度となる。必要な時間だけ露光してからテープを貼り直せば「撮影作業」は終了だ。



撮影サンプル2。使用フィルムはポラカラー679。露光時間は約10秒。露光時間が長いため、風で揺れる木の先端や人や車は写らないが、それを効果として利用しても面白い。

 使用するフィルムはインスタントフィルムのなかでも「ピールアパートフィルム」と呼ばれるもので、撮影後にカメラからフィルムを引き抜いた際に現像定着処理が始まり、一定時間(フィルムの種別と気温によって異なる)が経過したらフィルム上の用紙を剥離することで現像が停止する。剥がした時点では処理液でフィルム面が濡れているが、キットには乾燥用のボックスも付属している。



撮影サンプル3。使用フィルムはタイプ669。露光時間は約15秒。少々露出オーバー気味だが、タイプ669は露光時間が長くなればなるほど青みが増して他の色が弱くなる。

 実際に、この大きな箱と三脚を持ち運び、細心の注意を払ってじっくりと露光するという作業をしてみると、カメラの原点を体感しているような気分になる(最初期の銀板写真であるダゲレオタイプは30分の露光時間を必要とした)。できあがりのほうも、独特の味わいのある結果となり、長時間露光すると青っぽくなるポラロイド独特の色合いもおもしろい。とくにタイプ669は青くなる傾向が強いため、色再現性を重視するならばポラカラー679を使用したほうがよいだろう。
 また、使用していて気になった点としては、フィルムを引き出す際に三脚取り付け金具を貼り付けた両面テープがはがれやすく、一度両面テープがはがれたりずれたりすると三脚上でもぐらついてしまう。パッケージに入っているものよりも強力な両面テープを購入するなどして貼り直すことをお勧めする。

 高画質で気軽に風景をスナップするのもよいが、写真の原点に帰るピンホール写真を一度体験してみてはいかがだろうか。



ピンホールフォトキットの主な仕様
レンズ ピンホール(0.3/0.4mm)
使用フィルム タイプ669/タイプ606/ポラカラー679/タイプ665/ポラパンプロ100
焦点距離 約80mm
シャッター速度 手動
開放絞り 0.3mm径:F266/0.4mm径:F200(いずれも計算値)
本体サイズ 約15(W)×11.7(D)×13(H)mm
重量 約500g

(行正)




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